【やさしく解説】AWS障害 識者が「危険性」指摘
10月20日に、Amazonのクラウド「AWS」で大きな障害がありました。多くのサイトやアプリがつながりにくくなり、「クラウドって本当に大丈夫?」と不安に感じた人も多かったはずです。ここでは専門用語はできるだけ避け、データ復旧技術者・プログラミング講師・Webエンジニアの3つの視点から、何が起きたのか、これから私たちはどう備えればよいかをやさしく整理します。
データ復旧技術者の視点
「ひとつに頼りすぎる」と止まりやすい
クラウドは、インターネット上にある大きなレンタルのコンピューターです。便利ですが、同じ場所や同じ仕組みに集中して頼ると、そこにトラブルが出た時に一気に影響が広がります。家の鍵が1本しかないと、なくした時に全員が困るのと似ています。
データは消えにくいが、「すぐ取り出せない」ことが問題
障害が起きても、ふつうはデータそのものが消えるわけではありません。ただし、必要な時にすぐ取り出せないのは大問題。だからこそ、定期バックアップと復元の練習(手順書+テスト)が欠かせません。保存先は同じ場所だけでなく、別の場所・別アカウントにも置いておくと安心です。
プログラミング講師の視点
「クラウド=止まらない」ではない
クラウドは便利で強力ですが、ゼロ停⽌ではありません。大切なのは、どこかが止まってもサービス全体が止まらないように設計することです。たとえば、まずは同じクラウド内で予備を用意し(別の拠点にコピーしておくイメージ)、必要に応じてより広い予備(別の地域や別方式)に広げます。やみくもに複雑にするより、段階的な備えが現実的です。
「段階的に軽くする」発想
万一のときは、全部止めるのではなく、機能を少しずつ減らしてでも動かすのがコツです(例:読み込みは可能、書き込みは一時停止/画像は簡易画質で表示/トップページは静的版で代替など)。これなら、ユーザー体験を大きく損なわずに済みます。
Webエンジニアの視点
「つなぎ方」を弱くしない
いろいろな外部サービスに頼るほど、どこかの不調が自分のサービスにも伝染します。そこで、サービス同士をゆるくつなぐ(疎結合)設計が大切です。ひとつの部品が重くなったら、待ち時間に上限をつけたり、リトライ(時間をおいてやり直す)したり、一時的に機能をオフにする仕組みを最初から入れておきます。
「見張る」しくみと、切り替えの準備
問題を早く見つけるには、外からの見張り(サイトの動作を自動チェック)と、中の記録(ログやメトリクス)の両方が必要です。さらに、トラブル時に使う切り替え手順(ランブック)を、チーム全員がわかる形でまとめ、練習しておくことが重要です。
効果的な対策方法(まずはここから)
- バックアップを2か所以上に:別の場所・別アカウントにも保管し、毎月「復元テスト」を実施。
- 予備の動線を用意:同じクラウド内の別拠点や、読み取り専用の待機環境など「代わりのルート」を作る。
- 段階的な軽量運転:混んだら機能を少し切り戻す設計(読み取り優先・静的ページへの迂回など)。
- 見張り+通知:外形監視とアプリ内の記録を整え、担当者にすぐ通知。ユーザー向けのお知らせ文もテンプレ化。
- 手順を紙でも残す:緊急連絡先、切り替え操作、判断ルールを1枚にまとめ、定期的に訓練。
読者の感情と業界への影響
突然アプリが使えないと、誰でも不安になります。それは自然な反応です。同時に、この出来事は「私たちの生活が少数の基盤に頼っている」現実を気づかせてくれました。業界全体としては、ひとつに頼りすぎない設計と、透明な情報提供(状況の見える化)を進める動きが、さらに強まっていくでしょう。
まとめ
今回の障害から学べるのは、とてもシンプルです。(1)ひとつに頼りすぎない、(2)止まっても段階的に動かせる、(3)日頃から見張りと練習。この3つを重ねれば、次に似たことが起きても、サービスは大きく揺れにくくなります。私たちの毎日を支えるインターネットを、少しずつ強くしていきましょう。


