6月のサイバー攻撃が前年同月比17%増、生成AIプロンプトのリスクも判明
サイバー攻撃が17%増加!生成AI利用で高まる情報漏洩リスクと企業が取るべき対策
最新のセキュリティレポートによると、世界中でサイバー攻撃が大幅に増加しており、企業はこれまで以上に深刻な脅威に直面しています。特に、ランサムウェアの攻撃は巧妙化し、その勢力図にも変化が見られます。さらに、業務での生成AI利用が広がる中で、意図しない情報漏洩のリスクも顕在化しています。本記事では、Check Pointが公表した2026年6月のサイバー脅威動向を基に、これらの脅威の実態と、企業が今すぐ取り組むべき対策について詳しく解説します。
サイバー攻撃が広範囲で増加:企業が直面する新たな脅威の現状
セキュリティベンダーのCheck Pointは、2026年7月9日に2026年6月の世界的なサイバー脅威動向に関する最新レポートを公表しました。このレポートによると、組織当たりの週間平均サイバー攻撃件数は2270件に達し、前年同月比で17%増、同年5月比でも10%増という大幅な増加を記録しています。注目すべきは、この攻撃増加が特定の地域や分野に限定されず、世界中の広範囲で確認されている点です。これは、あらゆる企業がサイバー攻撃の標的となりうることを示唆しており、自社の業種や規模に関わらず、セキュリティ対策の強化が喫緊の課題であることを浮き彫りにしています。
ランサムウェアの脅威が進化:勢力図の変化と業種・地域別の影響
特に深刻なのがランサムウェア攻撃の増加です。2026年6月には646件の攻撃が確認され、前年同月比で33%もの増加となりました。被害割合を見ると、ビジネスサービス分野が31%と最も高く、次いで消費財・サービス分野が16%、産業製造分野が14%となっています。特に消費財・サービス分野は4月の14%から5月15%、6月16%と着実に増加傾向にあり、政府分野も4.0%から5.4%へと上昇を続けています。
地域別では、北米が44%と最も多くの被害を受け、APAC(アジア太平洋地域)が23%、欧州が22%と続きます。APACは4月の16.8%から6月には22.6%へと拡大しており、調査対象地域の中で最も伸び幅が大きかったことが報告されています。
ランサムウェア勢力図に異変:新たな脅威グループの台頭
ランサムウェアグループの活動量にも大きな変化が見られます。2025年半ばに設立されたRaaS(Ransomware as a Service)運営組織であるThe Gentlemenが、公開攻撃件数全体の17%を占め、11%のQilinを上回り首位に躍り出ました。The Gentlemenは、攻撃実行を担うアフィリエイトを関連フォーラムで募集するだけでなく、初期侵入経路提供機能も持ち、事前侵害済みのFortiGate機器約1万4000台へのセルフサービス型アクセスを提供していたことが明らかになっています。公開被害件数は320件超ですが、Check Point Researchの分析では実際の侵害件数は推計1570件超に上るとされています。Windows、Linux、ESXiに対応する暗号化機能を備え、2026年5月にはEDR回避手法の変更も公表するなど、その手口は巧妙化しています。興味深いことに、ランサムウェア全体の被害の約半数を米国が占める中で、The Gentlemenによる米国の被害割合は12%にとどまっており、侵害済み機器の所在地が被害地域を左右する構図が示されています。
一方、2022年から活動実績を持つQilinは、旧名称Agendaから改称後、Rust製暗号化機能や運営基盤を拡充。RansomHub活動終了後はアフィリエイトの募集を強化し、2025年3月以降は情報公開件数を増やしています。LockBitは前月1%から7%へ増加し、3番手となりました。2019年開始のRaaS組織で、2021年に機能強化版を公開。主な標的は大企業と政府機関で、身代金支払いがない場合は窃取データ公開日時を示す運用を採用し、暗号化速度の高さでも知られています。

業種別ランサムウェア被害割合の推移(2026年4~6月、出典:Check Point)
業種別では、教育分野が週間平均4816件で首位となり、前年同月比16%増でした。教育機関は、開放的なネットワーク、多数の端末入れ替え、限られたセキュリティ資源といった背景から、サイバー攻撃の標的になりやすい状況が続いています。政府分野は2836件で同5%増、通信分野は2835件で同13%増と、これらの分野も高い攻撃件数を記録し、世界全体の攻撃件数に占める割合が大きい状態が続いています。
地域別の週間平均攻撃件数では、中南米が3501件で首位となり、前年同月比27%増と顕著な増加を見せました。APACは3060件で同5%増、欧州は22%増、北米は14%増でした。一方で、アフリカは3008件で前年同月比9%減となり、調査対象地域の中で唯一減少した地域となりました。
生成AI利用に伴う情報流出リスク:企業が認識すべき新たな課題
近年、業務での生成AIの利用が急速に拡大していますが、これに伴う情報流出リスクも深刻化しています。Check Pointの集計によると、企業ネットワークから送信されたプロンプトの26件に1件が、機密情報漏えいリスクの高い内容と判定されました。世界平均のリスク率は3.9%ですが、生成AIを継続利用する組織の85%で高リスクなプロンプトが確認されています。さらに、高リスクと判定されたプロンプトとは別に、27%のプロンプトが機密性を持つ可能性のある情報を含んでいました。
2026年6月の1カ月間で、各組織は平均7種類の生成AIツールを利用し、利用者1人当たり平均78件のプロンプトを生成していることが判明しています。この活発な利用状況が、情報流出リスクを高める要因となっていると考えられます。
地域別の高リスク率では、中南米が5.2%で最も高く、欧州3.9%、北米3.6%、APAC3.5%と続きます。業種別では、医療分野が5.7%で首位となり、通信分野とビジネスサービス分野が各5.1%、情報技術分野が4.1%でした。これらの数値は、特定の地域や業種で生成AI利用における情報管理の課題がより顕著であることを示唆しています。
プロンプトへ含まれた機密情報では、個人情報が80%の組織で確認されました。その他、ネットワークやインフラ関連情報が62%、法務・規制関連情報が61%、財務情報が60%、従業員情報が57%と、非常に幅広い種類の情報が生成AIツールへ入力されている実態が明らかになっています。これは、企業が生成AIを利用する際に、どのような情報が外部に送信されうるのかを従業員が十分に認識していない可能性を示しており、利用ガイドラインの策定と従業員教育の重要性を強く訴えかけています。
まとめ:サイバー脅威の現状と企業が取るべき対策
今回のCheck Pointによる発表は、世界各地でサイバー攻撃件数が増加している状況、特にランサムウェアの勢力図が変化し、攻撃手法が巧妙化している実態を明らかにしました。さらに、生成AI利用に伴う情報流出リスクが顕在化していることも、企業にとって新たな課題となっています。
これらの脅威から企業を守るためには、多層的なセキュリティ対策が不可欠です。具体的には、最新の脅威情報に基づいたセキュリティシステムの導入・更新、従業員への定期的なセキュリティ教育、そして生成AI利用に関する明確なガイドラインの策定と徹底が求められます。特に、機密情報の取り扱いについては、従業員一人ひとりが高い意識を持つことが重要です。サイバーセキュリティは一度行えば終わりではなく、常に変化する脅威に対応し続ける継続的な取り組みであることを認識し、組織全体で対策を強化していくことが、これからのビジネスにおいて不可欠となるでしょう。
【調査方法について】
なおCheck Pointによる今回の発表は、二重脅迫型グループが被害者情報を公開するリークサイトの掲載情報を同社が集計・分析したものです。

