東急・田園都市線の脱線事故、信号システムに設定ミス 10年間発覚せず
東急田園都市線の梶が谷駅構内で発生した列車の接触・脱線事故について、東急は信号システムに設定ミスがあり、自動列車制御装置(ATC)が正常に作動しなかったことが原因であると発表しました。この設定ミスは、約10年前の2015年のシステム更新時から存在していたもので、長期間にわたり見落とされていました。
事故は、中央林間発渋谷行きの普通列車が上り線ホームに進入しようとした際、引き込み線上で停止していた回送列車と接触し、回送列車の最後尾が脱線したものでした。幸いにも、乗客や運転士にけがはなく、大きな混乱も避けられました。
しかし、事故当時、進入しようとした列車側の信号は進行可能を示す青を表示していました。これは、信号や分岐器を制御する連動装置の設定に問題があったためで、進路上に別の列車がいても信号が赤に切り替わらない状態でした。このため、ATCは青信号を伝え、結果的に列車同士の衝突につながりました。
この連動装置の設定ミスは、2015年3月の梶が谷駅の線路改修時にプログラムの条件設定が更新された際に存在していました。しかし、その後の10年間で一度もこの問題が明るみに出ることはありませんでした。東急は現在、設定ミスの具体的な原因を調査中です。
この事故を受けて、東急は当該分岐器の使用を当面停止し、信号プログラムの改修を行った上で、引き込み線の使用を再開する予定です。また、同様のY字型構造を持つ駅は他に3カ所あり、いずれも連動装置のプログラム設定に問題はないとのことです。同型の連動装置を設置している約30カ所についても点検を進めていると述べています。
しかし、この事故が起こった影響で、田園都市線は5日に14本、翌6日の1093本を運休し、2日間で計65万2100人に影響が出ました。7日午前0時には全線で運転を再開しましたが、このような事故が再発しないよう、鉄道会社はシステムの管理と点検に更なる注意を払うべきです。
特に、長期間にわたり見過ごされていた設定ミスが明るみに出たこの事例は、鉄道会社だけでなく、あらゆる産業で使用されるシステムの点検・保守について、その重要性を改めて認識する契機となるでしょう。技術が進化し、システムが複雑化する現代社会において、定期的かつ適切な点検は絶対に欠かせません。今回の事故を教訓に、私たち一人ひとりがシステムに対する理解を深め、安全な社会を維持するために責任を持つことが求められています。


