新成人はいまもテック業界への進路を目指している
テクノロジーの進化に伴い、これからの労働市場で重視されるスキルが大きく変わりつつある。人工知能(AI)の急速な普及や、トランプ政権下の科学研究予算削減の影響など、不透明な将来に直面する今日の高校生たち。そうした中で、彼らはいまもなお積極的にテック業界への進路を目指しているのだろうか。
AIの進化に強い興味を抱く新成人たち
WIRED Japanは全米から5人の高校最上級生を取材し、STEM(科学、技術、工学、数学)分野への関心や、これからの時代を展望する彼らの視点を伝えている。その中には、AIの開発現場に立ちたいと願う若者の姿がある。
例えば、ラクシュ・パテル(17歳)は、高校1年生の頃からAIに強く惹かれるようになった。ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)の急速な広がりに直接触れ、その技術進化の速さを目の当たりにしてきたからだ。特に、LLMがプライベートデータを間接的に公表してしまう可能性に関心を持ち、訓練中にそうした情報を除外するアルゴリズムの開発にも取り組んでいる。
「AIは進化途上にある新しい分野であり、いまこの段階で基礎を固めておけば、自分たちが社会に出るころにはその成果を目にすることができます」と、ラクシュは意気込む。自身のデータがどう扱われているのかを発言できる立場になりたいという思いから、AIの最前線に立つことを目指している。
医療現場への貢献を目指す新成人たち
一方で、アメリア・アンドレア・ラミレス(16歳)は、神経変性疾患への理解を深めることで、地域社会に貢献したいと考えている。家族の介護経験から、こうした難治性の病気に強い関心を抱くようになったという。
「患者ケアに携わりたい。弱っていきながら日々を過ごす人を支えたい」と語るアメリアは、小児神経科医を目指している。脳の構造や働きに強く惹かれ、その知識を地域に「返す」ことができる「通訳者」のような存在になりたいと考えている。
ただし、AIが医療現場で急速に浸透していることについては、「AIに頼りすぎることで、わたしたち自身の思考力が弱まってしまうのではないか」と危惧の念を隠さない。人の心と脳について学んでいる立場から、AI依存には距離を置きたいという。
最適化を追求する新成人エンジニア
一方のサイモン・チラ(17歳)は、インダストリアル・エンジニアリングを目指している。システム全体の動きに興味があり、AIを活用しつつも、人間が必要不可欠な役割を担い続けることを重視する。
「自分より大きなシステムの動きを研究してみたい。最終的にシステムは人間を必要とするはずだ」と述べるサイモンは、効率化を追求しつつも、人とのつながりを大切にしたいと考えている。
ジオンデイ・デウォルド(17歳)も、工学が好きな理由を「暗記中心ではなく『概念』がすべての基盤にある」ところだと述べる。AIが適用されても、さらなる最適化の余地は必ず残るという信念を持っているようだ。
新たな時代を担う若者たちの姿勢
テック業界への関心が高い今日の新成人たち。彼らは、AIの進化に積極的に関わり、医療現場での貢献や工学的最適化にも意欲を燃やしている。一方で、AIの急速な浸透に危惧の念を抱くなど、テクノロジーに対してバランスの取れた姿勢を示している。
未知の時代を歩む彼らの姿勢からは、テック業界の未来像が見えてくる。AIの可能性を最大限に引き出しつつ、セキュリティやプライバシー、倫理面での配慮も怠らない。そうした新成人たちの姿勢は、これからの技術社会のあり方を示唆しているといえるだろう。
短期的影響:新成人がテック業界への関心を強めていることは、AIを中心としたこの分野への人材流入が今後加速することを示唆している。セキュリティやプライバシー、倫理面での配慮も重視する彼らの姿勢は、テクノロジー企業の製品開発や人材採用にも影響を及ぼすことが考えられる。
中長期的影響:AIやデジタル技術の浸透が急速に進む中で、テック業界を担う新世代がそうした技術の可能性と課題の両面に関心を向けていることは、将来的な技術社会のあり方を大きく左右する可能性がある。倫理的な配慮を忘れずにテクノロジーの発展を推し進めていく姿勢は、持続可能な技術革新につながると期待できる。
読者への示唆:テク企業は、新成人の関心事であるセキュリティやプライバシー、倫理面での配慮を製品開発やサービス設計に積極的に取り入れていく必要がある。また、そうした意識の高い人材の採用や育成にも力を入れることが求められるだろう。一方で、教育機関は、最新のテクノロジートピックスを取り入れつつ、その倫理的側面への理解も深められるカリキュラムの構築に取り組むことが重要となる。


