ランサムウェア被害、上半期123件で過去最多 警察庁発表

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企業のデータを人質に身代金を要求する「ランサムウェア」の被害が、過去最多の水準に達しています。警察庁が公表した2026年上半期の統計では、被害件数と攻撃の予兆の両方が大きく増加しており、業種や企業規模を問わずリスクが広がっている状況が浮かび上がりました。本記事では、発表された数字の内訳と、そこから読み取れる傾向、そして事業者が備えておきたい対策の考え方を整理します。

上半期のランサムウェア被害が過去最多に

警察庁は10日、企業などのデータを暗号化する身代金要求型ウイルス「ランサムウェア」の2026年上半期(1〜6月)の被害が123件で、過去最多だったと発表しました。

同期間中に同庁が検知したサイバー攻撃の予兆とされる不審な通信は前年同期比の5割増で、今後も被害が相次ぐ恐れがあるとしています。被害件数と予兆の検知件数が同時に増えている点は、単発の出来事ではなく、攻撃の試行そのものが活発化していることを示すサインとして受け止めておきたいところです。

被害の内訳と復旧費用

警察庁によると、今年上半期の被害は前年同期比7件増で、半期ごとに統計を取り始めた2020年以降で最多でした。内訳は中小企業が約6割の79件で、大企業は31件に上りました。

業種別では「製造業」が37件、「卸売・小売業」が15件、「情報通信業」や「医療・福祉」などは各9件で、幅広い業種が狙われていました。特定の業界だけが標的になっているわけではなく、事業を続けるうえで欠かせないシステムを持つ組織が広く対象になっていると見られます。

「1億円以上」という回答も含まれていたほか、復旧までに1か月以上かかる企業も目立ったということです。身代金そのものだけでなく、システム復旧や業務停止に伴う損失が経営に重くのしかかる点は、事前対策を検討する際の判断材料になります。

不審な通信の検知状況

今年上半期には、サイバー空間で企業のVPN(仮想プライベートネットワーク)機器などの弱点を探索する動きも活発化しました。

通信元を国別で分析した結果、米国が最多で、オランダ、ブルガリア、英国などと続きました。犯罪組織は国内外で企業などのシステムの弱点を探して不正に侵入し、ランサムウェアなどのサイバー攻撃を仕掛けているとみられます。攻撃元が特定の国に偏らず広がっていることは、防御側にとって「どこから来るか」を前提にした対策が難しいことを意味します。

ランサムウェアの被害を巡っては今年2月、川崎市の病院から1万人以上の患者の個人情報が流出したことが判明しました。東京都も3月、都の調査研究事業の再委託を受けていた民間の調査会社で、一部のファイルが暗号化される被害が確認されたことを明らかにしています。

同社のシステム障害により取引先で納品の遅れが生じるなど深刻な影響が出ています。一社の被害が取引先の業務にまで波及する事例は、サプライチェーン全体で対策を考える必要性を示しています。

同庁では被害防止に向けて、ソフトウェアを更新するなどのセキュリティー対策を呼びかけています。インターネットや社内システムと切り離した「オフラインバックアップ」の取得や、サイバー攻撃を想定した業務継続計画(BCP)の策定なども効果的としています。

電気や航空、金融といった重要インフラについては、重大なサイバー攻撃の被害を未然に防止するため、昨年5月に「能動的サイバー防御」の関連法が成立しました。警察などは今年10月以降、攻撃元サーバーに侵入し、無害化する措置を始めます。制度面の動きは、被害を受けてから対応するのではなく、未然に防ぐ方向へと軸足が移りつつあることを示しています。

今回の公表で判明していること

警察庁の発表により、2026年上半期のランサムウェア被害件数が統計開始以降で最多となったこと、中小企業が被害全体の約6割を占めたこと、復旧費用が高額に上る事例が多数あることが明らかになりました。また、攻撃の予兆とされる不審な通信の検知件数も前年同期から大きく増加しており、被害が幅広い業種に及んでいる状況が示されています。

自社が直接狙われるイメージを持ちにくい事業者にとっても、取引先や委託先を通じて影響が及ぶ可能性は無視できません。まずは自組織のシステム構成とバックアップ体制を棚卸しし、ソフトウェア更新やオフラインバックアップ、BCPの策定といった基本対策がどこまで整っているかを確認することが、最初の一歩になります。