PPAP(パスワード付きZIP)はなぜ廃止?愛知県の製造業が今すぐ移行すべき代替手段【2026年版】

📋 この記事のポイント

PPAP(パスワード付きZIP+別メールでパスワード送付)は、政府機関や大手企業を中心に「適切ではない運用」として見直しが進み、脱PPAPが加速しています。受信側で添付ファイルの削除や受信拒否の運用が導入される例も出ており、送ったはずのファイルが届かない事態も現実に起きています。本記事では、愛知県の製造業が直面するPPAP問題の実態と、中小企業でも導入しやすいファイル転送の代替手段を解説します。

PPAPとは何か ― 「安全」だったはずの常識が覆った理由

PPAPとは、パスワード付きZIPファイルをメールで送り、別のメールでパスワードを送る方式のことです。「P:Password付きZIPファイルを送る」「P:Passwordを送る」「A:暗号化」「P:Protocol(手順)」の頭文字に由来します。

この方式は、監査対応や情報管理ルールの慣行として広まり、多くの日本企業で「標準的なセキュリティ手順」として定着してきました。しかしPPAPには根本的な欠陥があり、2020年11月には内閣府・内閣官房で、ZIP送付と同じ経路でパスワードを自動送付する運用について「適切ではない」として廃止する方針が示されました。こうした流れをきっかけに、民間でも「脱PPAP」の動きが加速しました。

PPAPの3つの致命的な問題

① ウイルス検知を無効化する「抜け穴」
パスワード付きZIPファイルは暗号化されているため、受信側のセキュリティソフトが中身を検査できない、または検査が困難な状態になります。これは、マルウェア「Emotet(エモテット)」の感染経路として実際に悪用されました。攻撃者が取引先を装い、パスワード付きZIPでウイルスを送りつけると、セキュリティゲートウェイの検査をすり抜けて受信者のPCに到達してしまうのです。

② 同じ経路で送る暗号化は意味がない
ZIPファイルとパスワードを両方ともメールで送る場合、通信経路を盗聴されれば両方とも傍受されます。「鍵のかかった箱と鍵を同じトラックで送っている」状態であり、暗号化としての実効性はほぼゼロです。

③ 業務効率の大幅な低下
送信者はファイルの圧縮・暗号化・パスワード生成・別送の手間がかかり、受信者は毎回パスワードを確認して解凍する作業が発生します。1日に数十件のファイルをやり取りする製造業の現場では、この非効率は無視できません。

政府と大手企業の「脱PPAP」 ― もう後戻りはない

2020年11月、平井卓也デジタル改革担当大臣(当時)は、内閣府・内閣官房で採用していた「ZIP送付と同じ経路でパスワードを自動送付する運用」について、適切ではないとして廃止する方針を示しました(会見)。この流れをきっかけに、民間でも「脱PPAP」の動きが広がりました。

製造業サプライチェーンへの直接的影響

政府機関での運用見直しを背景に、民間企業でも脱PPAPの動きが進んでいます。

企業名 業種 対応内容
日本製鋼所 製造業 2026年10月よりPPAP完全廃止予定。パスワード付きファイルのメール受信を拒否する方針を発表(送信者に通知、受信者には届かない運用とされる)
日立グループ 製造業/IT 2021年12月にPPAP廃止(公式発表
ソフトバンク 通信 2022年2月にPPAP利用停止。添付ファイルを削除する運用を導入(公式発表
三菱重工業 製造業 暗号化圧縮ファイルの利用廃止を宣言
双日 商社 脱PPAPを公表
日清食品HD 食品製造 脱PPAPを公表

(出典: 三菱重工業・双日・日清食品HDの脱PPAPについては日経クロステック 2023年1月3日付記事にて確認。日本製鋼所の方針は同社2025年9月26日付発表より)

特に注目すべきは日本製鋼所の対応です。同社の発表によれば、2026年10月1日以降、パスワード付きファイルが添付されたメールの本文・添付ファイルをすべて削除し、受信者(同社従業員)には通知しない運用を導入するとしています。つまり、PPAPでファイルを送ると、相手に届かないまま気づかれないという事態が起こり得るのです。

⚠️ 愛知県の製造業への影響

日本製鋼所は鉄鋼・産業機械の大手であり、愛知県の製造業とサプライチェーンで繋がっている企業は少なくありません。同様の受信拒否ポリシーは今後さらに広がることが予想されます。「長年の取引先だから大丈夫」と思っていても、PPAPを使い続けていると、見積書が届かない・納期の連絡ができないといった実務上のトラブルに直結します。特に複数のサプライヤーとやり取りする製造業の現場では、1社でも受信拒否を導入すれば業務フロー全体の見直しが必要になります。

製造業のメールは、本文よりも「添付が本体」になりがちです。図面、見積書、検査成績書、納期回答――この1通が止まるだけで、現場は一気に詰みます。だからこそ、セキュリティの話であると同時に、「届く形にしておく」こと自体がBCP(事業継続)の基本になります。

Emotetが証明した「PPAPは攻撃の入口」という現実

PPAPの危険性を最も劇的に証明したのが、マルウェア「Emotet(エモテット)」の感染被害です。

Emotetは、感染したPCのメール情報を盗み取り、取引先を装った返信メールにウイルス入りのパスワード付きZIPファイルを添付して拡散します。受信者から見れば「いつもの取引先からの、いつものPPAP」にしか見えないため、疑うことなくファイルを解凍してしまいます。

JPCERT/CCの注意喚起やIPAの解析報告によれば、パスワード付きZIPファイルはメールセキュリティゲートウェイでの検査が困難なため、Emotetの配布手段として繰り返し悪用されてきました。さらに、Emotet感染を足がかりにTrickBotやQbotといった別のマルウェアがダウンロードされ、最終的にランサムウェア攻撃に発展するという「攻撃チェーン」も確認されています。

IPAが2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」(組織編)でも、「ランサムウェア」や「サプライチェーンを狙った攻撃」などが上位に挙げられており、メール経由の攻撃パターンは現在も継続的な脅威として位置づけられています。

▶ 関連記事: 愛知県の製造業が知るべきランサムウェア対策 — 2026年最新の被害事例と実践チェックリスト

PPAP代替手段を比較 ― 中小製造業に最適な選択肢は?

PPAPを廃止した後、ファイルを安全に送受信するための主要な代替手段は3つに大別できます。

方式 代表例 導入コスト セキュリティ 中小企業向け
クラウドストレージ Box, Google Drive, OneDrive 中〜高
セキュアファイル転送 DataGate, クリプト便, HENNGE One 低〜中
メールセキュリティ強化 S/MIME, メール暗号化ゲートウェイ

クラウドストレージ型の特徴

BoxやGoogle Driveは、ファイルをクラウドに保存し、共有リンクを相手に送る方式です。アクセス権限の設定や閲覧履歴の記録が可能で、社内での共同作業には最適です。ただし、社外の取引先とのやり取りでは共有リンクの設定ミスによる情報漏洩リスクがあり、IT担当者が限られる中小企業ではその管理負担が課題になります。

セキュアファイル転送型の特徴

ファイルを暗号化された専用サーバーにアップロードし、受信者にダウンロード用URLを通知する方式です。ダウンロード期限を設定でき、期限が過ぎれば自動的にファイルが削除されるため、「渡し切り」の用途に適しています。受信者はブラウザだけでファイルを受け取れるため、相手側に特別なソフトの導入を求めません。

メールセキュリティ強化型の特徴

S/MIMEなどの電子署名・暗号化技術を使ってメール自体のセキュリティを強化する方式です。技術的には最も堅牢ですが、送受信双方に電子証明書が必要であり、中小企業の取引先に導入を求めるのは現実的ではありません。

中小製造業が「セキュアファイル転送」を選ぶべき3つの理由

愛知県の中小製造業がPPAP代替を検討する際、以下の理由からセキュアファイル転送サービスが最も現実的な選択肢となります。

理由① 取引先に負担をかけない
製造業のサプライチェーンでは、取引先のIT環境を変更させることは困難です。「このツールを入れてください」と言えない関係性も珍しくありません。セキュアファイル転送なら、受信者はメールで届いたURLをクリックしてブラウザでダウンロードするだけ。新たなアカウント登録やソフトウェア導入は不要です。

理由② ファイルの安全性を事前に確認できる
PPAPではパスワード付きZIPの中身をセキュリティ製品が検査できないことが根本的な問題でした。セキュアファイル転送サービスでは、ファイルがアップロードされた段階で内容を確認できるため、PPAPのように「暗号化されているから中身がわからない」という問題が構造的に解消されます。

理由③ 送信履歴・ダウンロード履歴が残る
「いつ・誰が・どのファイルを送り、いつダウンロードされたか」が記録されます。製造業で重視されるISMSやPマークの監査対応にも、この履歴が証跡として活用できます。

脱PPAPの移行チェックリスト

PPAPからの移行を段階的に進めるための実践チェックリストです。

No. チェック項目 優先度
1 現在PPAPでファイルを送受信している取引先をリストアップする
2 取引先がパスワード付きZIPの受信拒否を導入していないか確認する
3 代替手段(ファイル転送サービス等)のトライアルを実施する
4 社内のファイル送信ルール(情報セキュリティポリシー)を改訂する
5 従業員向けに新しいファイル送信手順の教育を実施する
6 取引先に移行の案内を送付し、新しい方式での送受信テストを行う
7 一定期間の並行運用後、PPAPの完全廃止日を設定・通知する
8 メールサーバー側でパスワード付きZIPの送信を自動ブロックする設定を検討する

AIによるビジネスインパクト分析

🤖 PPAP廃止が愛知県の中小製造業に与える影響

短期リスク(2026年内): 日本製鋼所のように大手メーカーがPPAP受信拒否を実施するケースが増加します。愛知県はトヨタ自動車を頂点とする製造業サプライチェーンの中心地であり、Tier1・Tier2サプライヤーが脱PPAPを進めれば、その下請け企業にも対応が求められます。「いつもの方法で見積書を送ったのに届いていなかった」という事態は、受注機会の損失に直結します。

中期的な競争優位(2026〜2027年): 早期にセキュアファイル転送に移行した企業は、取引先から「セキュリティ意識が高い」と評価されます。経済産業省は、サプライチェーン全体の対策水準を高めるために、企業の立ち位置に応じた対策の段階(★)を設けて可視化する制度の検討を進めています。取引先から求められる要件が整理されやすくなるため、今のうちに「外部に説明できる送受信ルール」を整えておくことが安心材料になります。

コスト比較: PPAPの運用コストは「見えない」だけで実際にはかなり大きいものです。従業員がファイル1件を送るために圧縮・パスワード設定・別送で平均3〜5分のロスが発生します。1日10件のファイル送信を行う企業では、年間で約120〜200時間の業務時間がPPAPの手順に費やされている計算になります。セキュアファイル転送サービスへの移行コストは、この「隠れたPPAPコスト」を考慮すれば、多くの場合は早期に回収できます。

まとめ:PPAPを使い続けることは「リスクを放置すること」

PPAPは、かつて「安全な常識」として定着していましたが、政府機関での見直しをきっかけに、大手企業でも添付削除や受信拒否などの運用が進み、継続使用のリスクが現実的になっています。さらにEmotetのような攻撃で悪用されてきた経緯もあり、いまは「続ける理由」より「やめる理由」の方が明確になりました。

特に愛知県の製造業にとって、PPAPの廃止は単なるセキュリティ対策ではなく、サプライチェーンにおけるビジネス継続性の問題です。取引先がPPAPを受信拒否するようになれば、見積書も図面も納期連絡も届かなくなります。

まずは上記のチェックリストの項目1〜3から着手し、セキュアファイル転送サービスのトライアルを始めてみてください。

▶ 関連記事: 愛知県の製造業が知るべきランサムウェア対策 — 2026年最新の被害事例と実践チェックリスト

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