予算を3倍に増やしたのに侵入される企業が続出——セキュリティ投資の落とし穴
「予算は増やしたのに、なぜサイバー攻撃を防げないのか?」——多くの企業が直面するこの疑問に対し、明確な答えが示されました。フォーティネットジャパンが2026年2月17日に公開した「2026年クラウドセキュリティレポート」日本語版により、セキュリティ予算の拡充と防御体制の成熟度に深刻なギャップが存在することが明らかになりました。
世界1163人の専門家が証言する「複雑性のギャップ」
同レポートは世界1163人のシニアサイバーセキュリティリーダーおよび専門家から得た回答を基に作成されています。調査結果によると、クラウド環境の急速な高度化とセキュリティ運用体制の成熟度との間に「複雑性のギャップ」が拡大していることが判明しました。
AI活用が進みクラウドの構成や管理は大きく変化し、攻撃対象領域も広がっています。従来型の運用モデルでは可視性の確保や迅速な検知・対応が難しくなっているとのことです。
予算増でも防げない3つの根本原因
調査により、多くの企業がサイバーセキュリティ予算を拡充しているにもかかわらず、防御体制の成熟が十分に追い付いていない背景には、以下の3つの要因があることが明らかになりました。
1. 防御の断片化
クラウド拡張に伴い導入ツールは増加していますが、相互連携が不十分なまま個別運用される例が多いことが判明しました。約70%の組織が、ツールの乱立と可視性不足を導入上の最大障壁に挙げています。複数システムからのアラートを手作業で分析する負担も大きいとのことです。
2. 人材面の課題
74%が適切な専門人材の不足を指摘し、59%は自社のクラウドセキュリティ成熟度を初期段階と評価しました。スキル不足と採用難が重なり、チームは過重状態に置かれているとのことです。
3. 脅威側の高度化
攻撃者は自動化やAIを活用し、設定不備の探索や権限経路の把握を高速で実行しています。66%の組織が、クラウドの脅威をリアルタイムで把握し対処する能力に十分な自信を持てないと回答しました。
複雑化するクラウド環境の実態
調査によると、クラウド利用形態も複雑化が進んでいます。88%がハイブリッドまたはマルチクラウド環境で運用しており、81%が二社以上のクラウド事業者を活用しています。4社以上を利用する企業も29%に達しました。
分散アーキテクチャや動的アイデンティティー管理、SaaS利用の拡大が管理難度を押し上げているとのことです。
企業戦略の転換点——統合型プラットフォームへの移行
こうした状況を受け、企業の戦略は転換期を迎えています。新たに戦略を策定する場合、64%がネットワーク、クラウド、アプリケーションを横断的に統合できる単一ベンダープラットフォームを選択すると回答しました。
統一されたデータモデルと制御基盤により、可視性向上や迅速な検知・対応を実現し、運用負荷の軽減を図る狙いがあるとのことです。同レポートでは、クラウドの成長と同時に拡大する攻撃面を前提とし、分断された対策から統合型エコシステムへの移行が不可欠だと指摘されています。
短期的影響:この調査結果は、現在多くの企業が直面している「セキュリティ投資の効果が見えない」という課題の根本原因を明確化しています。特に70%の組織がツールの乱立を問題視している点は、短期的には既存ツールの棚卸しと統合計画の策定が急務であることを示しています。
中長期的影響:66%の組織がリアルタイム対処能力に自信を持てない現状は、中長期的にサイバーセキュリティ業界全体の構造変化を予示しています。単一ベンダープラットフォームへの移行を64%が選択するという結果は、セキュリティソリューション市場の統合化が加速することを意味し、ベンダー選定基準の根本的な見直しが必要になるでしょう。
読者への示唆:まず自社のセキュリティツールの連携状況を点検し、アラート処理の自動化率を確認してください。74%が指摘する人材不足を補うためには、ツールの統合による運用負荷軽減が現実的な解決策となります。特に複数クラウドを利用している場合は、統一的な可視性確保を優先的に検討することが重要です。

